2013/09/04

「さよならタマちゃん」を読みました。

昨日の帰りに寄った本屋でたまたま見つけたマンガが、武田一義先生「さよならタマちゃん」。話題になっているとは知らず、何となく興味を惹かれて購入。23時過ぎに読み始めてしまったら途中で止められなくなり一気に読了してしまいました。以下、途中からネタバレしますが事前に注意書きします。まずはネタバレなしの感想から。

ザックリ言ってしまえば、主人公である35歳男性・漫画アシスタントの作者の、精巣腫瘍との闘病記です。精巣腫瘍は若い年代でも発症しますし進行が早いから実にやっかいです。

なぜ一気に読んでしまったのかというと、シンプルな絵柄と淡々とした描き方で非常に取っつきやすく読みやすいというのが一つ。

術後化学療法(手術で精巣ごと腫瘍を摘出した後に行う抗がん剤治療)の時期が作品の大半を占めるのですが、抗がん剤というのはどうしても色々な副反応(有害な副作用や後遺症)が出るので、その症状に苦しみながら考えていた様々な思いが描かれています。こう書くと悲壮感漂う、非常に重い雰囲気なのではないかと思われるかもしれませんが、本作品では主観的な描写が多いにも関わらず、作風の柔らかさによって読みやすくまとまっています。

一気に読んでしまった理由その2は、同室の他患者さん達との交流もきちんと描かれている事。抗がん剤治療は長期入院になるものもあり、長期になれば他の患者さん達とのコミュニケーションも必ず発生する事になります。良好な関係もあれば困っちゃう関係もある、そんな交流が時にはコミカルに、時にはシリアスに、かといって派手派手しくではなくあくまで穏やかに描かれています。

奥様もポイント、これが一気に読んでしまった理由その3。「家族のサポートが大事」と言葉にしてしまえばアッサリしたものではあるのですが、きれい事では済まなかった事もきちんと描かれていて、その上で二人の心の繋がりが感じられて胸にジーンときます。

そんな中でもネタバレなしで心に響いたシーンを挙げますと、P.88の1コマ目とP.205の5コマ目でしょうか。どんなシーンかは実際の本を開いて御確認下さい。

私は現役の産業医ですから、がんの治療の為の長期療養後に職場復帰する際の配慮や治療中の作業者の方が仕事をするにあたっての配慮について検討し会社に提案する事が仕事のひとつなわけであり、治療の副作用や後遺症についての知識も非専門医程度の知識は持っているし(ホント?)、実際の社員(=患者)の方だったりそれこそ研修医の頃には患者さんを目の当たりにして知ってはいるわけですが、しかしながら患者側の立場で描かれたものを読むのはやっぱり辛いものがあります。それでも一気に読み進める事ができたというのは、この作品の素晴らしさ故だと思う次第でございます。

相変わらず文章が下手くそで全くまとまっておらず申し訳ございません…ですがこの本は本当にオススメですよ。現在コチラで第1話を試し読みできる様なので、まずは読んでみて下さい。

しっかしイブニングで連載していた時は全然知らなかったんですよね…本紙は読んでいたはずなのになぁ…不覚。



さて、この後にネタバレ感想を少しだけ書きます。




















さてさて。

産業保健に携わる者として心に響いたのはP.88の1コマ目。

アシスタント先のO先生(某GAN○ZのO先生ですね)御一行がお見舞いに来たシーン。入院治療が長引く事が分かり、「O先生に迷惑はかけられない」と自分の代わりに新しいアシスタントを雇う様に伝えた作者。それに対して、新しいアシは雇わずに作者の復帰を待つと言うO先生御一行。戸惑う作者にO先生がかけた言葉が「迷惑かけたくない気持ちも分かりますけど、病気なんだからそれはあきらめませんか」。

O先生チームの強い繋がりが感じられて胸が打たれました。こういう良い職場が会社の中でも増えていく様、産業医としてできる事を頑張っていかないといかんなぁと思った次第です。

そして予防医学に携わる者として心に響いたのはP.205の5コマ目。

作者と同じ時期に同じ年代で精巣腫瘍の手術と抗がん剤治療を行う事になった市川さん。話す機会がなかった二人が初めてじっくりと話すシーン。抗がん剤の効果が出て腫瘍が検査では認識できない大きさまで縮小(消失)して退院できる事になった作者と、治療の効果があまり出ないため更にきつい治療(大量化学療法)を行う事になった市川さん。自分の精巣の異常に気付いていながらも忙しさにかまけて受診が遅くなった、もっと早く受診したら治療も効果が出たのかも、市川さんは淡々と話します。作者はただ話を聞く事しかできません。そんな市川さんから出た言葉が「忙しかったのはホントだけど、命より大切な用事なんてひとつでもあったのかな」。

こういう事にならない様にするのが自分の仕事ではあるのですが、この言葉は本当に重く心に響いています。

う〜ん…やっぱり文章がうまくまとまらないなぁ…修行不足で申し訳ないです。

0 件のコメント:

コメントを投稿